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柔道部ブログ
OB 小室宏二

「寝業師の勝負」
OBの小室宏二です。
前回の「ビックマック」に関連するマルちゃん杯での思い出です。
私は現役時代、柔道を楽しいと思ったことはほとんどありませんでした。
苦しい思いを耐えたものがより強くなるものだと信じていました。
(突き詰めていくとそんなことはないです)
そんな私でも試合中、勝敗以上に楽しくなってしまったことがあります。
中学3年時、関東マルちゃん杯の準決勝でした。
私たち足立三中は国士舘中と対戦、私は寝業師の伊藤勇君と対戦しました。
勇は言わずと知れた私たちの世代を代表する寝業師です。
しかし私も寝技には自信があり、また負けん気も強かったことから
「寝技の国士舘がなんぼのもんじゃい!」思い、ムキになって寝勝負を挑んでいました。
さらにその時は勇ですから余計です。
試合は寝技の引き込み合戦でした。
足立の応援は
「寝技いくな!立て立て」と言います。
私からすれば立っていた方が投げられそうで危ないし、寝勝負から逃げるのも嫌です。
一方、国士舘の応援は
「落ち着け!おーちーつーけー!」の連呼です(笑
確かに勇の興奮度はマックスを超えている感じでした。
試合が進むにつれて私も興奮してしまい、なんだか稽古をしているような楽しい気持ちになってしまいました。
結局、勝負は引き分け、チームは負けてしまいました。
その後、高校生になると勇とは国体の東京チームで一緒になり、強化選手に選ばれると
イタリアジュニア国際でも一緒になりました。
あの時のことを話すと「足立にだけは絶対に負けられなかった」とか、
「俺は国士舘の奴を絞め落としてやる!」てムキになっていたよ。
と話は大いに盛り上がりました。
また会った時はお互いの得意技でもちょっとした帯の握り方、抑え方の違いを教えあったりしました。
そんな勇の訃報を数年前に聞きました。
もう彼と寝技の技術や思い出話ができないと思うと、寂しい限りです。
でも彼との勝負、寝勝負の思い出は今でも私の胸に刻まれています。
早稲田実業学校
小室宏二